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JMHの存在意義、画像とその歴史、将来
文:T-INOUE 氏 編集:pyonmizu

 

JMHの放送とスケジュール

JMHは短波帯の中で、利用頻度が高い放送の一つになります。

JMHの放送内容

 内容はご存知の方も多いと思いますが、気象関係の各種図(解析図や予想図)を放送しています。

ASAS    地上解析図

AUAS**  高層天気図

AXFE50  極東地域 数値計算解析図

AXFE78

COPQ**  北西太平洋地域の海面水温図

STPN    海氷情報(主に冬季)

FSAS**  地上予想図(人が介在して描く図)

FUFE50* 極東地域 数値計算予想図

FSFE**

FXFE***

FSAS**  中期予想天気図

AWJP    沿岸波浪解析図

AWPN    外洋波浪解析図

FWJP    沿岸波浪予想図

FWPN    外洋波浪予想図

WTAS07  台風進路予想図

 

2004年のスケジュール変更の特徴
(スケジュール表はこちらです<<http://www.kishou.go.jp/177jmh/JMH-2004-3-25(Jpn).pdf>>)

1.海洋資料に特化しつつあること。

2.再放送の数が増えたこと

 

 廃止される図

  AUXT**  流線解析図

  FUXT**  流線予想図

 AUXTおよびFUXTは、熱帯低気圧の動向を検討する上で必要な図で、南東アジア地域の気象官署向けの
色彩をもっています。

AUAS70  700hPa解析図

 AUAS70の廃止が何故端されるのかは良く分かりません。ただ、富士山測候所が自動観測化することを
考えると、3000m付近の検討が、ある意味必要ないと判断されたのかも知れません。

 AUXN50  北半球地域500hPa高層解析図

FSAS0* 96時間以降の、数値計算による地上予想図

 FSAS12  122時間先の数値計算による地上予想図

  **FE**  36時間先までの極東地域 数値計算解析・予想図

極東地域解析図および予想図の廃止ですが、民間気象会社にも同じ図(レイアウトが異なる)が公表されている
ので、3月後半以降そちらへの変更が予定されているのか良く分かりません。

 

 数値計算資料の図が次々となくなる背景の一つに、日本の天気図(民間気象会社に限らず)が非常に見難いと
いう問題があります。白黒であるが故に何について描いてあるのか判読しにくいというのが理由です。現在の
JMHで画像をカラー化するのは技術的に困難であることから、犠牲にする必要があるかと思われます。

 船舶などの洋上を航行する利用者にとって、数値計算資料がなくなるのは、別の意味で重大な問題をはらんで
います。

  1. 低気圧などの発達・衰弱などの判断が出来なくなる。

  2. 長期航海になるため、その動向が把握できなくなる。

  3. 衛星通信を使う必要が出て、情報入手にかかるコストの高騰が避けられない。

 

このあたりの解決策は、スケジュール改正後になってから議論されるのかも知れません。

 

 1988年以降から現在まで

1987年−1988年にかけて、気象庁のADESSおよびNAPSの大幅な更新が行われました。各設備の更新とも
相まって、JMHもその放送スケジュールも大きく変わることになりました。1988年当時の資料には、CUXN、
CSXNと言った月平均資料(主に長期予報向け)や、週間予報解説図(FEFE19)図が多く出ていました。現在では
放送されていませんがFEASは、気象庁から民間気象会社を通じて現在でも公開されています。

長期予報用の図

   CUXN10

   CUXN50

   CSXN1

   CUXN51

週間天気予報用の図

 FEFE19  週間天気予報用の解説天気図

   AZXN50   5日平均北半球高度とその偏差(実況+予想の平均情報)

  FEAS5** 数値計算による500hPa予想図

   FEAS**   数値計算による地上予想図

  FEAS** 数値計算による地上予想図

 

その後、1990年代に入ると週間予報が毎日出るようになり、長期予報用の天気図が次々と姿を消していきます。
変わって国際貢献とも言えるような天気図として、AUXT、FUXTなどといった、流線解析図の放送が開始されます。
周辺国の通信事情の向上や放送内容の充実を図るべく、幾度となくスケジュールの改正が行われていきます。

 

台風進路予想図

 1988年から台風進路予想図がJMHで別扱いで放送されました。JMHではWTFE02という名称で台風が
日本に接近した時、3時間毎に1回放送されていました。一つには地上天気図の放送を待たずして、速報で
報じる姿勢が出たことによります。

 その後予報期間が延長され、1997年には現在の最長72時間予想に至っています。

 

  ASAS

1990年代中頃には、現在の気象庁内でシステムの運用が行えないほど、負荷が大きくなったこと(電力と冷却
能力の問題)から、清瀬の気象衛星センターにADESSとNAPSが移転します。この改正でさらに、地上天気図の
放送開始が40分加速します。また、MANAMも同時に毎日スケジュール表を放送するようになります。また高層
天気図の放送開始も若干早くなりました。

 1988年当時にASASが観測時刻から、3時間20分たった時刻から放送開始になっていました。これは比較的
最近まで変わらなかったスケジュールです。

何故3時間20分を経過しないと、放送できなかったのか。これは、この前に別のFAX放送が、天気図を放送して
いたことが起因していたからです。具体的にはこの放送開始30分ほど前の間にJ通信が、船舶向けに天気図
放送を有料で行っており、JMHが早く放送を出されると死活問題になりかねないと反対したことから、抑止された
経緯があったからです。

 JMG(無線テレタイプ放送)があった当時、WWJP20が放送されていました。スケジュール自体がないJMGで
日常の受信開始時刻を追うと、観測後2時間40分前後10分で出力されていたことが分かっています。WWJP20
が放送されるとき、低気圧や高気圧の位置や気圧の値が出ているので、この時点で既に完成したことになります。

 ASAS放送までに流れ(1980年代後半)

   00分    観 測
  05分頃   センターへ報告
   20分    整理し、各国へ発信
   20分前後  各国からの実況を受信(観測後1時間30分程度)
   90分    実況を作画機で、プロット
          人手による解析
  140分    ASASの放送原稿締切
          WWJP20などの海上気象警報向け情報の作成
  160分    放 送
  200分    JMH放送開始

    (1990年代)

   90分    ワークステーション(CAD)上で解析開始
  140分    CAD上で完了すると、ASAS放送原稿自動作成               ADESSへ送信
  160分    JMH放送開始

FSAS

FSASには、2種類有ります。手書きによるものと数値計算によるものの2つがあります。

手書きによる予想図は、JMHでは00UTCだけでした。1990年代後半に12UTCのものも放送されるようになり
ます。2001年には手書きによる48時間予想図の配信も開始され、海上の悪天情報を追加する形式が採用され
現在に至っています。

手書きの天気図は、気象庁内のFAXスキャンナーで読みとらせる方式がとられていました。1990年代に入り、
CADシステムが充実したことから、CADデータを画像情報に変換し放送するようになります。現在のASASも
同様です。

 

波浪図(AWJP,FWJP,AWPN、FWPN)

波浪図は現在でも大きな違いはありません。また、予想図とも大きな変化はありません。
唯一変わったところは、手書きで描いた図面がCADへの移行を果たした。と言うところです。JMHでは、
波浪関係の図面は00UTCだけです。台風時に12UTCが放送されるようです。

海洋関係にとっては00UTCだけというのは問題を残すのではないでしょうか。

 

海洋資料(COPQCOPA,FOPN,STPN,FIOH)

この資料の放送だけ、1988年以降から放送枠が変わっていません。旬平均海面水温図は現在でも極軌道
衛星NOAAシリーズの情報で作画されています。GMSにも海面水温情報は得られていましたが、分解能が
低いこともあって海面水温図には取り入れられていません。

  注 意:現在、GMSによる海面水温図は、MTSATの運用まで作成が停止されています。

1988年頃は、北西太平洋地域の旬平均海面水温図をCOPNと呼んでいました。1989年に自動作画が導入
されたことから、手書き特有のなめらかさが失われました。その後現在のCOPQと変わっています。

冬季に放送される、FIOHとSTPNは流氷の動向を伝える情報ですが、毎日放送されません、

 

予想図の放送 速さの秘密

 予想図の出力は、現在でこそ違いがありますが、1988年当時はJMHのスケジュールに近い形で予想図も
作成されていました(もちろん気象庁予報部内ではもっと早かったのですが)。

 1.12時間前の解析値を基準にして、12時間後の予想図を現況とします。

 2.この現況に、実況値の値を加えて更新します。

 3.2の解析情報を初期値と見立てて、予想計算を行います。

 4.3による予想結果が、極東地域の予想図になります。

 

手書きによる地上予想図は、極東地域の予想図を基に、人間が介在して描いた図です。実際に完全解析が
終わった初期値が出てくるのは、観測後6時間経過してからになります。航空用はこの全初期値を基に予想図を
制作するため、JMH以上に遅かったのです。

参考:日本がこの当時、国外に向けて数値計算結果を送信するのは、観測後7時間30分経過してからでした。

 

JMHの将来

 JMHに関しては幾つかの問題を抱えています。

  1.図面の提供が非常に遅い。

  2.電波の状態が悪くなると、情報が得られなくなる。(JMHで月1回流れる電波予報PREDICTION

 気象庁も1990年代後半には、MTSATを用いた気象放送の検討が行われました。

1999年にWMOに対して報告された、MTSATーLRITの仕様には天気図や数値計算資料の提供も行うことが
明記されています。MTSAT−1RではWEFAXとLRITが交互に放送されることになっていますが、MTSAT−2の
運用からLRIT方式に完全移行することが決まっています(具体的な運用スケジュールは次のような具合です
MTSAT−1R2005年3月まで<<http://www.wmo.int/hinsman/sche.htm>> 
MTSAT−1R 2005年3月下旬以降<<http://www.wmo.int/hinsman/sche1.htm>>
仕様についてはこちら<<http://www.wmo.int/hinsman/JMA_LRIT_ver5.pdf>>)。

MTSAT−2は当初の予定では2003年頃に運用を開始(観測機器の設計寿命を迎えるためにMTSAT−1から
移行)、この移行と時期を同じくしてJMHの廃止が検討されていました。

 現在、MTSAT−1RおよびMTSAT−2の打ち上げと運用開始時期が未定で、JMHの運用も混沌下状態がしばらく続きそうです。当面JMHは存続する見込みではありますが、衛星への移行若しくは、インターネットへの移行になっていくのかも知れません。

―了―

画像の出所

pngファイル
ファイルに日付情報を加えているファイル  JMA/国土環境(株)
悪天予想図                   JMA/NOAA(NWS−AWC)

jpgファイル
AUAS70  )
電波予報    )            JMA/南極老人星 さん
FSAS**  )               

GIFファイル              T。Inoue 

不許複製

 

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